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一週間後、ちょうど親がいなかったので優斗の部屋にきてもらった。ふたりで麦茶を飲みながら、この一週間どうしていたか聞いてみた。
「ずっと一緒にいただろ」
ふっと噴き出して笑う陽明だが、優斗は緊張で笑えない。陽明の距離が近い気がして、ますます身体が固まった。
「優斗はなにか特別なことしてた?」
「腹筋してた」
「へえ」
おもしろいものを見つけたような表情で優斗の脇腹を撫でる手つきはいやらしい。ぞくりとなにかが背筋を通り抜けた。
「脱いだらすごいの?」
「……そうなりたかった」
一週間程度腹筋をしたところで、陽明に勝てるような体形は作れなかった。陽明はまた笑う。
「可愛いな」
「可愛くねえ、よ……ん」
触れ合うだけのキスに脈が速まり、陽明のシャツをぎゅっと握る。うっすらと唇を開き、深いキスを求めたら応えてくれた。舌が口腔を撫で、肌が甘く粟立つのを抑えられない。何度も唇を甘噛みされて身体の奥が熱くなった。
「は、はるあき……」
「優斗、可愛いな。ほんとに可愛い」
甘みを孕んだ声を耳に吹き込まれ、身体が小さく跳ねた。耳朶を食みながら陽明の大きな手が優斗の制服を乱す。ベルトを外す音には聴覚から興奮してしまった。
肌に直接触れられると、なぞられたところが熱を持って疼いた。脇腹を撫でられてくすぐったいのにじわりとなにかが湧き起こる。そのなにかがわからず、優斗は首を横に振った。
「脇腹、やだ」
「気持ちいい?」
「わかんない」
「ここ撫でると背筋がびくびくってするけど?」
また脇腹を手のひらで円を描いて撫でられ、優斗自身もわかるほどに背筋が揺れた。
「ほら。気持ちいい?」
「やだ……。わかんねえし」
強がっても身体は素直に反応する。下半身がじくじくと疼き、もどかしさに腰を揺らした。
優斗だけが乱れているのが悔しくて、陽明のシャツの裾から同じように手を滑り込ませてみた。だがそのあとどうしたらいいかわからない。真似して脇腹を撫でてみると、陽明は頬を上気させた。
「エロい触り方」
「あっ……、やだ」
「さっきから『やだ』ばっかりだな。本当に嫌ならやめるけど?」
胸の突起を指先で転がされ、じんわりとした鈍い快感が腰の奥に伝わっていく。
本当は嫌ではないけれど、未知の感覚が少し怖い。縋るように陽明を見あげたら頬を撫でられた。優しい手つきに緊張がとけていく。
「気持ちいいときはそう言えよ」
「……だって、恥ずかしい」
正直にこんなことを口にするのにも羞恥を感じる。思わず顔を背けるが、露わになった首筋に舌を這わされてすぐに顔の位置を戻す。
「優斗って、ここのライン綺麗だよな」
「知らねえし」
舌でなぞったところを何度も指先で撫でられる。そんなところを意識したことがないので、どんなふうになっているかわからない。ただ、触られると気持ちいい。
「ここも気持ちいい?」
「……」
「教えて」
指で撫でたラインにまた舌が這う。羞恥を我慢できず、覆いかぶさる陽明の脚を蹴った。
「しつこいんだよ!」
「痛えな」
「挿れるならさっさと挿れろ!」
情緒もなにもない発言にも、陽明は呆れを見せなかった。丁寧な愛撫が優斗の心と身体を溶かしていく。
「俺は挿れたいんじゃなくて、一緒に気持ちよくなりたいんだよ」
「一緒に?」
「まあ、挿れたいけど」
どっちだよ、ともう一度蹴りを入れると、陽明はその脚を捕まえて太腿にキスをした。小さな熱にぞくりと肌が熱く騒いだ。
「その顔、すげえエロい」
「馬鹿……くそ」
なにか言いたくても頭が働かない。最後のあがきで『馬鹿』と繰り返す。次々与えられる刺激に、自分でも驚くような甘みを帯びた喘ぎが漏れる。
指でいじられていた胸の突起がぷくりと芯を持ち、陽明は少し口角をあげてからそれを口に含んだ。言いようのない疼きに腰が自然と揺れる。
「それ、やだ」
「でも腰揺れてる」
「……そういうこと、言うな」
たしかに気持ちいいのだが、淡い刺激なのでもどかしい。もっと直接的な刺激がほしくて自分の昂ぶりに手を伸ばしたら、その手を掴まれた。
「自分で触んなよ」
「でも……触りたい」
「じゃあ『触って』っておねだりしてみ?」
意地悪に微笑む陽明は楽しそうだ。悔しいけれど、そんな表情も恰好いいと思った。
陽明は優斗が正直におねだりなんてするはずないと思っている。なにか仕返しがしたくて、だが恥ずかしくて視線を逸らした。
「……触って……」
視界のすみに目を瞠る陽明が映り、少しでもやり返せたかと満足する。自分の言ったことは恥ずかしいけれど、陽明に勝てるのはやはり嬉しい。まだ幼馴染から抜け出せていないのかもしれない。
「優斗、反則」
「え……あ、うそ……っ」
優斗の下着をずらした陽明は、昂ぶりをすっぽりと口の中におさめた。ぬめる口内は熱く、鋭い快感が突き抜けて意図せず腰が震える。
「あ、あっ……」
恥ずかしいのに声が抑えられない。快感の強さに涙が浮かび、目の前が揺らめいた。吐く息が熱く乱れていく。
昂ぶりを舌でなぞり、横から唇で扱きながら、指が優斗の奥まったところに触れた。何度か円を描くように撫でられ、指先が忍び込んだ。
「っ……」
「痛いか?」
「っあ……、馬鹿、そこでしゃべんな……っ」
張り詰めたものに熱い吐息が触れて、薄ぼんやりとした刺激となる。それさえ優斗を追い込むには充分なものだった。
指が少しずつ窄まりをほぐす。異物感に眉を寄せる優斗を、陽明は熱い視線でとらえている。
「苦しい?」
「平、気」
「気持ち悪くないか?」
「変な感じではある」
中で指が動いている感覚なんてはじめてだから、言ってしまえば違和感しかない。だが、それを口にしたら陽明はやめてしまうような気がして、少しだけ強がった。
そんな強がりなどお見通し、と身体を起こした陽明がキスをくれた。甘く溶かすキスに、力が抜けていく。指が増やされても、苦しさや痛みはなかった。
「……っ、そこ、変……」
「ここ?」
「んっ……」
中を探っていた指が内壁を撫でると、ぞくぞくするような変な感覚がある。ひとところを何度も撫でられ、徐々に腰が震え出した。
「待って、変……」
「大丈夫。ここだろ」
ぞくぞくは鋭い快感へと姿を変え、脳まで貫いた。違和感で萎えていたものが再び熱を持つのがわかる。つま先でシーツにしわを寄せ、零れる涙もそのままに喘いだ。
「だめ、ほんと……やばい……っ」
今にも達しそうなくらいまで高められ、内腿が引き攣る。しとどに濡れた熱をまた口に含まれ、限界まで昇り詰めた。
「ああっ……!」
背が反り、腰の奥から熱いものが迸る。数回身体を震わせて、陽明の口内に白濁を吐き出した。
喘ぐように胸で息をする優斗を見ながら、陽明は口内に放たれたものを手のひらに出した。それが生々しくてボックスティッシュを投げつける。
「馬鹿! さっさと片づけろ」
「馬鹿はねえだろ。すげえ可愛いな」
「ほんと馬鹿!」
こんな悪態をつく男のどこが可愛いのか。だが陽明は優しく目を細め、大切なものを愛でるように優斗を見つめるので、恥ずかしさに顔を腕で隠した。
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