夏の星

2.

急に涙が洪水のように流れ落ちた。 両親に対する恨みなのか、それとも彼女から冷遇されたためなのか、理由は不明だった。 ただ胸が崩れ落ちた。

どれくらい経っただろうか。 閑散としていたカフェに人が込み始めた時、ユ·ハンビョルから電話がかかってきた。 「どこにいるのか」という質問に、「夏は言葉に詰まった。 どうしても彼に本当のことが言えなかったので、家だと答えた。

ヨルムが彼女との出会いを隠したように、彼女もハンビョルにその日のことを言わなかったようだった。 たまに二人はユ·ハンビョルを中心に軽く通り過ぎたが、目も合わせなかった。 夏を先に無視したのはいつものように彼女だった。

幸いなことに、それ以来彼女の呼び出しはなかった。 ヨルムが気を遣って気をつけたせいもあるが、ハンビョルが目が回るほど忙しい日々が多くなったせいもあった。

ハンビョルが助演として出演した映画がかなり成功したため、ドラマを撮ることになったという。 浮かれたハンビョルは、早く成功して夏と一緒に暮らしたいと口を開けば同居の話を切り出した。 もちろん夏も嫌いではなかった。

できれば24時間、いつもあいつと一緒にいたかった。

周りにいつも女性が沸き立つユ·ハンビョルと付き合っているということは、それだけ彼を疑うことも多くなるということを最近になって感じるところだった。 ますます人気が高くなるユ·ハンビョルを眺める夏の心情は複雑だった。

しかし、彼らの愛は変わらないと信じて疑わなかった。 夏に限った星しかないように、彼も自分だけを愛するだろうと。

その日は早い梅雨で数日間雨が降った日だった。 授業を終えて家に帰る車の中で、ハンビョルが子供のように意地を張った。

「一緒に行く？ 一緒に行こう」

「行ってもいい？」

「1シーンだけ撮るので、長くもかからない。 あなた 私が働くのが気になると言ったじゃない。 遠くから静かに見物だけすれば大丈夫だよ」

「本当に行ってもいい？」

「大丈夫だってば！ 静かにしてればいい」

このまま再び撮影に行かなければならないのに、ハンビョルは答えなければ夏を過ごさない勢いだった。

「兄さん、明日夏が一緒に行ってもいいよね？」

「私はいいよ。 ヨルム、君がいればハンビョルも静かだから。 あいつ、訳もなくお前の前でガオを捕まえるじゃん。”

「私がいつ！ないことを適当に言うなよ？」

「とんでもない話？ 笑わせているね！ ヨルム！お前と一緒にいると 声も低くなったりするの知らないだろ？ ちっぽけなやつがどこでそんなことを学んでは。 友達同士で何でガオを捕まえるんだ？」

運転していたマネージャーの打撲にハンビョルの顔が真っ赤になった。 見当がつかなかった奴の視線があちこちに揺れ、訳もなく咳払いをした。 最近、時々ウエイトトレーニングを受け始めたハンビョルは、さらに男らしい雰囲気が流れた。

たまにブランド品のファッションショーのモデルとして招待され、海外でも注目され始めたという。 まもなくハリウッド映画にキャスティングされるかも知れないという記事も見た。 モデルと俳優として輝き始めた、こんなにすごい奴がなぜ自分を好きなのか、夏は今も理解できなかった。 自分はただ母親に似た目を除けば平凡な男だった。

「あの人の言うことを聞くな、訳もなく私をからかおうとしているんだから」

夏の耳元で静かにささやいていたハンビョルがにやりと笑った。 二人はマネージャーの目を避けて、ランドセルの後ろで手を取り合った。 わずか1年前まではこんなことは想像もできなかった夏だった。

男と恋をするなんて。 それも芸能人と付き合うことになるとは。 もっとも、突然金持ちの父親ができたことからがドラマで起こりそうなことだった。

「そこに行けば他の芸能人もいるの？」

「あなたはお父さんが芸能人を見ることをすごく不思議に思う」

ハンビョルのけんつくに夏はぴゅうっと笑った。 これまで平凡な一般人だった夏は、目の前にあるユ·ハンビョルも不思議だった。 そんな夏を見て、ハンビョルは「もう適応しろ」とからかった。

「私以外のやつに惚れてはいけない」

「そんなことはないよ。 あなたよりハンサムな人は見たこともないけど？」

「そうでしょ？たぶん、これからもないだろう。 私がペク·ソヒの息子じゃん」

いきなり出てきたその名前に、ヨルムはハンビョルの視線を書くように笑った。 誰かを愛することにも罪悪感があるということを生まれて初めて知った。 お母さんもこんな気持ちだったのだろうか。 彼女に会って以来、夏の胸の片隅に重い石ころが居座った。

「愛、それは変わる。 大したことではない」

皮肉っぽく詠んだ彼女の声が今でも耳に生々しく残っていた。 そうだ、そうだ。 誰でも変わるものだから、愛も簡単に変わるだろう。 しかし、彼女に変わらないものもあるということを見せてあげる。

たかが好奇心から夏はユ·ハンビョルを愛したのではなかった。 この1年間、お互いに対するこの感情のために、たくさん喧嘩もした。 ただ幼いという理由でそんなことを言われるのなら悔しかった。

ヨルムがユ·ハンビョルに心の傷を治療されたように、ただ人が人を好きで愛することだけで見てはいけないだろうか。

ヨルムは私のそばで真剣な表情で台本を見ているハンビョルをじっと見つめた。 ハンビョルは有名な映画監督である父親と大韓民国最高の女優ペク·ソヒの間に生まれた。 俗に言う芸能人一家の「金のスプーン」だった。

有名な両親の後光とハンサムな容貌がついてくれるので、幼い頃から自然にドラマと映画に出演し、しっかりとした演技力を土台に人気もかなり高かった。

それでユ·ハンビョルには悩みや傷などはないと思ったが、必ずしもそうでもなかった。 ある日、あいつのオフィステルでテレビを見ていたところ、突然飛び出した不便な会話の中で、二人はお互いの共通点を見つけた。 その時、ハンビョルは夏がただの一度も聞いたことのない慰めの村を投げた。

「私たちは何の過ちもない」

ハンビョルのその慰めが、夏には救いの星の光のようだった。

*

翌日まで雨は降り続いた。 空に穴が開いたように降り注ぐ雨の中で、映画撮影は不可能なようだった。 しかし、夏の心配とは違って、映画撮影は正常に行われるという話を聞いた。

[家の前。早く出てきて]

ヨルムはハンビョルのトークを見るやいなや玄関に走って行った。

デートといえばデートだった。 この日のために、ヨルムは大事にしておいたブランドの運動靴と服を取り出した。 ハンビョルが待つかと思って急いで祖父が大切にしている庭園を通って階段を下りている途中、家に入ってきた兄と出くわした。

勉強も顔も背も。 すべてが平凡な夏と違って兄は頭も良かったし顔もハンサムで背も高かった。 夏が母親に似ているなら、彼は父親によく似ている方だった。

それで夏は彼の方がもっと不便だった。 兄と並んでいると、自分の存在がさらに汚れるようだった。

どうすればいいのか分からず、頭を下げた夏は、彼をさっと通り過ぎた。 背後にくっついた兄の視線を無視して門を開けると、外車一台が夏の前で止まった。 そっと開いた後部座席の窓越しにハンビョルが冗談を言った。

「そこの可愛い学生。 早く乗って」

にやりと笑った夏は、思いもよらず車に乗り込んだ。 車は激しい雨の中を走った。 「ご飯は食べたか」というハンビョルの質問に「いいえ」と答えるやいなや、包装されたのり巻きとミネラルウォーターが手に入った。

「そうだと思って準備してきたんだ。 あなた ちゃんと食べてね」

「普段もこうやって食べるの？」

ハンビョルがくれたのは夏が好きな牛肉キンパプだった。 のり巻き一つを口の中に入れてもぐもぐと噛みながら投げた質問に、マネージャーがハンビョルの返事を横取りした。 気が切れるように鼻を鳴らし。

「言うまでもない。朝ご飯を食べると胃がもたれることを知らないのか」と悪口を言ったやつが、今日は朝一番からのり巻きを買わなければならないと大騒ぎしたんだよ。 とにかくユ·ハンビョルの気まぐれは分かってくれなければなりません。 あなた こら！ 私だから我慢してあげるよ。他の人だったら喧嘩になったよ！」

マネージャーの愚痴にヨルムがのり巻きを食べている途中、箸を下ろすと、ハンビョルが舌打ちをしながら大声を上げた。

「それで今喧嘩しようか？ 急にのり巻きが食べたくなることもある！ それですごく…そうだね！ 兄貴、本当にこんなことするの？ これでいいのかよ！ 先輩のせいでヨルムが食べないじゃん！」

「それがどうして私のせいなの！」

「顔色を伺って食べるつもりか！」 食べたら胃もたれしそう！」

ちょうど信号に当たると、しばらく後ろを振り向いたマネージャーは、夏を見ながら明るく笑った。

「夏よ、あなたに文句を言わないから食べて。 そのお店のキンパがすごくおいしい。 私が30分待って買ったんだけど、感謝の言葉を一言も言わないユ·ハンビョルよりは、あなたが食べた方がいいから」

こうだからこれ以上食べることができなかった。 事実、ユ·ハンビョルが優しくて愛想が良いのは事実だが、ほとんどが飾り気のある部分が多かった。 だから今、マネージャーに怒って大声を張り上げるユ·ハンビョルが本物だった。 ハンビョルは夏に限っては飾り気がなかった。 親もよく知らない本来の姿を率直に見せてくれた人が夏だと言った。

「もう！兄さん！」

「なんで！あなた、今日どうしたんだ？ やってなかったことをするか？ うるさくて。 2人でシートベルトしたよね？ ヨルム、今日のハンビョル本当に面白かったよ。 急にアイドルみたいにメイクしてって言うんだよ。 おい！ユ·ハンビョル、お前がアイドルなのか？ あなた 今日の主人公に叩かれるシーンなんだ？ 血の扮装をしなければならないやつがあごにシェーディングはなぜ入れてくれと言って頭にドライはなぜしたのか？」

いつも余裕があったハンビョルの顔が今にも爆発しそうなトマトのようだった。

「兄さん、やめなさい」

あごをかみしめて静かに吐き出したハンビョルの脅迫に、マネージャーはバックミラーで後ろをちらっと見た。 ようやく尋常でない雰囲気を感知した彼は、訳もなく口笛を吹き、「雨がたくさん降る」という言葉にテーマを変えた。

静寂の中で、夏は厳しい表情で車掌の外を凝視するハンビョルをちらりと見た。 今は表情だけ見ても彼が何を考えているのか大体見当がつく間柄だった。 マネージャーに内緒でこっそりとハンビョルの手を握ったヨルムは、あいつの耳元で小さくささやいた。

「今日は本当にかっこいい」

「本当に？」

「うん、本当に」

夏のささやきに気分が良くなったハンビョルは、淡い笑みを浮かべた。 世の中の人々は絶対分からないユ·ハンビョルの素敵な笑顔だった。 彼は再び夏にのり巻きを勧めたが、再び食べる雰囲気ではなかった。 静かにのり巻きを袋の中に入れた夏は、車の窓の外を凝視した。

ソウルを抜けるほど雨はさらに激しくなり、彼らが乗った車は依然としてその雨を突き抜けて走った。 その間、料金所を過ぎてサービスエリアに立ち寄るかどうかをめぐって、ハンビョルがマネージャーと再び口げんかをした。

この2人はいつもこうだった。 一日に何度も言い争いをした。

「夏よ、あなたは？ あなたはサービスエリアに行きたいか？」

「私です…···? 私は…」

結局、巡り巡って二人は夏に決定権を渡した。

「うちのヨルムがサービスエリアを見物させてあげよう！ こいつ、あまり通ってないから新世界だと思うよ？」

「私もそうしたいです。 でも、あなたの立場を考えてみて。 あなた 今、君が思ったよりかなり有名だって！ 人が集まったら？ そして私たち、遅れたんだけど？ 雨が降ればいつもより遅くなるということをよく知っているような奴がこんなことをするのか。」

「よく知っているから！ 私たちだけ遅れるの？ さっき先輩に電話してみたけど、そっちも遅れそうだって言ってたよ。 主人公もいないのに、私一人でスタンバイしていようか？」

「言葉もどうしてあんなに上手なのか。 あなた どこかに行って講演してもいいだろう！」

「そうでしょ？私がペク·ソヒさんに似ていて、言葉一つは素晴らしいじゃないか。 さあ！それではサービスエリアに入ることに決定！」

楽しそうなハンビョルとは反対に、マネージャーは無表情でため息ばかりついた。 これでいいのか。 むしろヨルムが顔色を伺う中で、ハンビョルはサービスエリアの食べ物に対する講義を繰り広げた。

「トッポッキ、焼きポテト、ソトク、ホットドッグにクルミ菓子もあるけど、何から食べようか？」

「私の言い訳をして君が全部食べようとしているんだろう？ ダイエットしなきゃいけないんだって」

「大丈夫、大丈夫。 二人で分けて食べるんだから。 あなたして食べるのは太らないよ。」

食べることが特に好きだが、太りやすい体質のハンビョルは毎日ダイエットをしなければならないという言葉を口にして生きてきた。 見た目はちょうどいい体格だが、画面で見ると1.5倍も大きく見える」と話した。

頭から足先まで見せる人生を生きなければならない彼らの避けられないくびきだという。 朝早く急いだので、やっと午前10時だった。 こっそり時間を確認したヨルムはハンビョルに聞いた。

「何が一番おいしいの？」

「うーん、うーん…」

ハンビョルが幸せな悩みをしている時だった。 突然運転していたマネージャーが慌てた様子で声を上げた。

「あ！あ！あ！あ！ あ！あの車どうしたの！ おぉ！」

その言葉と同時に危険なほど揺れていた車は、雨の中でバランスを取れずに転んだ。 中央分離帯にぶつかって一周した車は、速度を落とせずに走っていた車と再びぶつかった。

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文章がぎこちなくてすみません