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3話 アジメイの技術
翌日、雨宮家にて。
リビングで母親と話を進めることにした。
パソコンを取り出す。
パソコンに長いコードを接続して、先に表面が凸凹とした平たい金属を繋げる。
装置名は『その場アジメイ』で、平たいそれを咥えてもらい、パソコンでデータを送るといろんな味を実現できる。金属部分から味が出る。その場で味を作ってお客様に提供できることからその名前が付いた。
気に入ってもらえればそのデータを開発部に送って、そのデータで『魔法調味料アジメイ』を作ってもらい、その調味料の粉末をお客様に売る。
今回は嫌いな食べ物を食べられるような調味料を目指すことにした。
「美味しいって思ってもらえれば苦手なものも食べられるようになります。『魔法調味料アジメイ』は吸収されずに排出されるので無害ですがその性質上栄養がない、水には完全には溶けないため粉っぽさが気になる場合は粉末サイズを小さくする必要がある、気管支に入った場合はしっかりと病院で見てもらう、などの注意点がございます。気管支等に関しては食べ物に関しても病院で見てもらった方がいいので、うちの商品特有の問題ではございませんが、説明することになっていますので」
「豆代さん、トマト、ピーマン、レタス、キャベツ、ニンジン辺りが苦手らしくて。できれば苦味とか酸味とか感じないようにして、すべての野菜に同じ調味料で。あとは、最終的には調味料を減らしていく感じにしたいわ」
「もちろんです。少し甘めにしましょうか」
「子供たちが食べやすいように。あたし、アジメイさんの代替砂糖使ったことがあるんだけど、あれよりも爽やかな甘さとか出せます?」
「いけます。では、『その場アジメイ』で探してみましょうか。野菜の味を指定して、そのあとにどんな味を加えればいいのか」
雨宮様に平たい金属を咥えてもらう。
そのときは少し温めて、お客様がびっくりしないようにする。
加える調味料の傾向が掴めた。
「今、開発部にデータを転送しました。明日調味料として持ってきますので試してみましょう」
「お願いしますね。あ、そうです。もしかして、世界三大珍味の味も作れます」
「はい? もちろんですが」
「試してください。どんな味かなと!」
雨宮様はキラキラした目で見てくる。
お客様と仲良くなるのも営業だ。
それに、美味しいを届けて、幸せを届ける。
アジメイの技術を楽しくもらえたら嬉しい。
「今日はありがとうございました」
「それはあたしの台詞よ。豆代さん、あなたで良かった。私ね、ブログで稼いでいるの。今度『その場アジメイ』について書いていいかしら?」
「どうでしょう?」
「困らせてしまってすみません。上司の方に聞かなければですよね!」
「はい」
家を出る。
強烈なアルコール臭がした。
千鳥足のサラリーマン?
近寄ると面倒だ。
避けて遠回りして帰った。
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