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7話 気づき
バナナ寄りの甘さを目指して調味料を作った。
雨宮様は気に入ってくれた。
最終的に、その調味料で子供たちは食べてくれたみたいだ。
今日は、その調味料をどれほど買うかという追加の契約をすることになっている。
「久しぶりね、豆代さん。野菜を食べるようになってくれたわ」
「二週間ぶりです。準備が遅れてしまい申し訳ございません」
「いいわ。無理難題のつもりだったから真摯に向き合ってくれて良かった。美味しいを届けたいって気持ち、良く伝わった」
私をもてなすために、クッキーとコップを出してくれた。
ジュースを出してくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
口が渇いた。
ジュースを飲む。
バナナのような、フルーツジュースだろうか?
濃厚で飲み物というよりかはフルーツを食べているみたいな満足感?
喉に絡みつく感じが普段飲むものと違う。
「ねえ、豆代さん」
「はい」
「本当にありがとね。自滅してくれて」
……え?
あれ、何を言われた?
自滅、なにそれ?
視界が揺れる、ぼけていく。
ジュースの違和感、私は何かを盛られたらしい。
そして、一言聞こえた。
「アジメイさえなければ私たちは料理屋を続けることができた。夫も酒に溺れなくて済んだ。ねえ、ありがとう。復讐に必要なもの揃ったわ。防音、異臭防止、そして毒とそれをカモフラージュする『魔法調味料アジメイ』。息子たちがドジしたときはびっくりしたけどね」
冷たい視線、淡々とした声。
私は驚いたまま事態を理解できずに、意識を失うのだった。
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