1話 株式会社アジメイ

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1話 株式会社アジメイ

 私は『美味しい』を届けたい。  幸せを届けたい、私はそのために、株式会社アジメイに入社した。  アジメイのアジは『味』、メイは解『明』から来ているそうだ。  コンセプトは、『味』と『香り』を科学するというもので、『味』部門と『香り』部門のうち、私は新卒入社して二か月を経て『味』部門の営業部に所属している。  株式会社アジメイは開発部と営業部が中心である。  営業といっても家庭を回って押し入ったり断られたりするようなことはせず、お客様が広告や口コミを見て連絡があったときの対応をする。  一年目は先輩に付いて現場研修を行いながら仕事を覚える。  そして、二年目。  私は二週間という長期案件を対応することになった。  お客様の名前は『雨宮』様。  二児の母親で嫌いな食べ物が多い子供たちの苦手克服。  アジメイの得意とする内容だ。  私はスーツ服を整えて会社を出る。  自動扉のすぐ外で直属の主任に会った。  今日は一時間遅い出勤で、フレックスタイム制を使って週二回ほど幼稚園に子供を送るようにしているらしい。残りは夫が送っているとのこと。 「おはようございます! 詩織主任」 「元気だね。確か初めての長期案件? ほうれん草はマメにね、マルマメちゃんだけに」    私は友人や同じ部署の方々にマルマメちゃんと呼ばれている。  丸岡豆代、それが私の名前だ。 「はい」  わくわくする。  けど、緊張もいっぱいだ。
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