安楽城らら

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一瞬。そんな急にと、思ったけれども。 今の私の状況なら正直、その方が有り難いと判断したからだった。 死のうと思った日にこんな出会いがあるなんて、縁というより。因縁染みてるとか思ってしまった。 「性的な目的はないから安心して。僕の好みはワガママで、面倒臭くて賢い女やから」 中々好みが難しい人だと思った。それには「はぁ」と、生返事をした。 「魂を貰うだけやったら、(しゅ)で絡めるとる。縛る。だけで何とでもなるんやけど。僕が欲しいのは、僕の言うことを聞く魂。まぁ、簡易的な式神みたいな感じに仕立て上げたいんや。ちょっと、実験も兼ねてるんやけど」 言ってることの大半は良く分からなかった。知っても仕方ないと思い。そこはさらりと流して。気になった言葉を繰り返した。 「実験ですか……」 「ほら、流石に魂を好きにしてええよ。なんて言う人はおらんからさ。ちょっと色々と試してみたくなるやん。ららちゃんはそう意味では、有り難い存在やね」 そこで、薄暗い中でくすりと笑う声がして、カツンとブーツの音も大きくこだました。 「だから、生きているうちから僕に魂を馴染ませておきたい。それには一緒に住むのが一番馴染みがええ。そんな訳で勝手に死なんといてな。こっちの準備が終わったら、死んでくれてええから」 本当に私のことに興味がない口振りで、いっそ安心出来ると思った。 「はい……分かりました。でも。黒助の仇をちゃんと取れて、確認してからじゃないと、死ぬつもりはありません」 そこでふと、疑問が湧いた。 「私がもし、生きたいって言ったらどうするんですか?」 あっさりと青蓮寺さんに、呪い殺されてしまう可能性もあるのかもと、思っていると。
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