安楽城らら

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「生きたらええやん。生きたいと言う人間を殺すと、魂が僕に反発するに決まっている。僕の代で実験が無理やったら、次に引き継ぐだけ。人間何事も焦ったらアカン。魂なんてデリケートなモンを扱うんやったら尚更やな」 さらっとした返事に、嘘を付いてる様子はなく。 それよりも完璧に私のことを、単なる道具としか見てないのが如実に分かった。 呪術師だからこんな思考なのか。はたまた生来のものかは分からない。 今回の不倫騒ぎで会社の同僚。友人、家族まで『私が悪い』と剥き出しの感情をぶつけてきた。 私自身、知らなかったとは言え不倫行為を働いてしまったのは事実。 それに反論しても仕方ないと思い、皆の言葉や感情を受け止めるのに必死だった。泣きながら謝ったこともある。 それと比べると、私に向けられた青蓮寺さんの何の感情も込められてない。 だから、そこに憐れみも同情も不快さもない。 それがサッパリとしていて、心の負担にならなかった。 それだけでも、ありがたいと思ってしまった。 「そうですか。今は生きたいと言うよりかは……黒助を殺した奴に仕返しがしたいと言う、気持ちでいっぱいです。それが終わったら……死ぬようにします。もう、私には何も残ってませんから。何もしたいことも思い浮かばないし」 なんとも陰気な言葉。 しかし青蓮寺さんは「そうか。生死の選択が残ってるのは贅沢モンだと思うけど、まぁ。人それぞれやしな」と。 足元のガラクタをバキッと踏み越えて、廃ビルの入り口へとズンズンと進むのだった。
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