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「ふ、ふざけないで! なんで、罪もない犬達にどうして、こんな酷いことが出来るのよっ!」
大声で叫び、瞳にはジワリと涙が浮かんでしまった。この中に黒助がいると思うとやるせない。這いつくばって骨を拾ってやりたい。
そんな悲しみは白い欠片を見ていると、全て怒りへと変わった。
手にしていた空っぽになった引き出しをその場に高く──掲げ。
「狗神なんか居なくなってしまえっ!!」
思いっきり、箪笥本体に向かってぶん投げてやった。
がこんと音を立てる引き出し。
みしりと何か軋む音がした。しかし、壊れる様子は無かった。
それから、無我夢中で残っている箪笥の引き出しを全部引っ張り出して、中身をぶち撒けてやって。
空になった引き出しをめちゃくちゃに壁に、障子に箪笥に、畳に狂ったようにぶつけてやった。
ついでに天井から垂れている、品のない紫の布や周りにあるごちゃごちゃとした物も引っ張ったり、蹴っ飛ばしたり、ぐちゃぐちゃにしてやった。
肩で大きく息をして、いつの間にか爪は割れて血が滲んでいた。私の周りはいろんな物が散乱して酷い状態だった。
それでも箪笥には細かな傷しか付いてなかった。
箪笥はまだ壊れてはいない。
「はぁはぁ。なんで、ちっとも壊れないのよっ! 早く壊れてっ」
焦って声に出す。
その時に「う。あ、頭……が」と。
背中越しに今、一番聞きたくない声を聞いてしまった。
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