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流石に肝を冷やして、うしろを見ると犬養がごそりと。体を横に動かしていた。
「!」
それに対して横に伏している青蓮寺さんは呼吸があるものの、ぴくりとも動きもしなかった。
そんな様子を見て時間がない。早く青蓮寺さんを病院に連れて行かなければ。
でも、このままじゃ。犬養がもう少しで起きてしまいそう。
そうすると私では絶対に勝ち目がないと思った。
「青蓮寺さん、起きてっ! 頑張ってっ! 私も頑張るからっ」
早く早く。なんでもいいから。なんとかしないと。焦るな焦るなと言い聞かす。
引き出しをぶつけてもダメだった。何か他にと思っていると──つま先に何かこつんと。長い棒が当たった。
それは青蓮寺さんが持っていた、警棒だと気がついた。
「これは……これしかないっ」
最後のチャンスとばかりに素早く足元の警棒を掴み。
引き出しが抜け落ちて、ぽっかりと黒い口をいくつも開けている箪笥を前にして、敵に挑むように箪笥を睨みつける。
そのまま、警棒を両手でしっかりと柄をぎゅっと握りしめ。見よう見真似で剣道の正面の構えのように、頭上高く警棒を掲げた。
そしたら。
後ろから──「な、何をやっているんだ」と言う犬養の声がしたが無視をする。
ただ一点。全ての元凶の狗神を見据える。
「腕や指が折れてもいい。手が使えなくなってもいいから、神様……黒助。青蓮寺さんっ。お願い、力を貸してっ!」
箪笥を一刀両断してやるイメージを脳内で強く思い描き。
力の限り警棒を振り下ろしながら、わぁぁと。私が叫んだのと。
「やめろぉぉっ!!」
と、犬養の声が重なったのは同時だった
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