安楽城らら

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バタンと扉を閉めて。ワタワタとシートベルトを付けると車は低いエンジンが唸り声をあげて、スルスルと走り出した。 車は荒れた駐車場を後にして、山の中の車線を走り出す。 車中は洗練された内装で、こんな高級車乗ったことがないと。背中を優しく包むシートにみじろぐばかり。 肩に力が入っていたところに、青蓮寺さんに声を掛けられた。 「こっから一時間ぐらいで家に着く。それまでに呪って欲しい人って誰や。どんな呪いが良いか、ってまずは話しを聞かせて貰おうかな」 呪って欲しい相手は黒助を死に追いやった人物。 奥さんや上司が怪しいけれども。 現状、誰だかわからない。 「話すのは構わないんですが、その黒い犬ってもう見えないんですか? それに、青蓮寺さんは犬と喋れるんでしょうか。犬は何か言ってませんか?」 疑問に思っていたことをぶつける。 「もう見えへんな。動物の言葉は何となく読める。雰囲気とか。個体による。あの犬はららちゃんに付いていた思念と言うか、想いというか。残滓。それも、もう消えてしまった。本体も死んでいるからもう僕を呼びに来るようなこととか、人前に現れることは無いと思う」 「黒助の想いが私に……」 また、泣いてしまいそうになるのをグッと拳に力を込めて。今は泣いている場合じゃないと。不倫のことも含めて全て話をした。 その間、青蓮寺さんは山道をドライブしているかのようなハンドル捌きで、私の声をBGM代わりにしているんじゃないかなと、思うほどリラックスした様子だった。 話し終えると、周囲は濃い緑の景色から。鮮やかな木々が目立ち。 ちらほらと山肌に住宅が見え出して、山を降りて街へと戻る道を走っているのが分かった。
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