安楽城らら

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高速入り口への看板を見つつ、以上ですと。言うと。 「不倫ねぇ。で、その上司と奥さんの名前は?」 「犬養(いぬかい)国司(こうじ)と犬養粧子(しょうこ)。黒助は奥さんに奪われて。誰に売られたか。それが本当かどうかも、分かりません」 「犬養ね。ふーん。なんか嫌な符牒やな」 「え。それはどう言う……」 「いや。気にせんといて。それより、犬を殺した奴じゃなくて。その二人を呪った方が、ららちゃん的に良くない?」 心の隅で思っていたことを、いきなり暴かれてしまいどきっとした。 二人を呪いたい気持ちもあるけど。 「それは、そうですね……二人には良く無い感情を抱いてます。特に国司さん……いえ。犬養国司には色々と言ってやりたいことが沢山あります。でも、私にも落ち度があったと思うから」 思い返せば、犬養国司は周囲に頑なに交際を内緒にしていたこと。それを私にも強要していた。 会うのは週末の夜だけ。私の家やホテルに行く事が多かった。 スマホは肌身離さず。単身赴任だと言うのに、身の回りがキッチリしていたとこと。 それとなくの予兆はあったのだ。 私はまさかねと、思い。それらに目を瞑ってしまっていた。ふぅっと、深呼吸してから。 「奥さんの……犬養粧子さんには酷く罵られ、お金を請求され、私の生活がめちゃくちゃになりました。でも、私が奥さんの立場だったら。知らなかったって、言われても許せないだろうなって……そう、思ったから」 誹りを受けるしかないかと思った。 けど、大事な犬まで取り上げられたのは許せない。やり過ぎだと思ってしまう。 しかし……不倫をしてしまった私に原因があると言われたら返す言葉がない。 気持ちがまだ上手く、整理が付かない。 ただ悲しい。辛い。苦しい。 二人を呪うよりかは、もう縁を断ち切りたい。 無かったことにしたいと言う気持ちが強い。 だからこそ、黒助の死は別。 私が不倫をしたから、黒助が死んでも良い理由にはならない。 ため息にならないように息を長く吐き切ってから、視線を窓の外に向けると。 緑は少なくなってきて、住宅街が増えてきたところだった。
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