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「律儀な性格やな。靴を揃えて、死のうとしていたぐらいやもんな。僕的には呪いが二つに分かれるより、一点集中の方がやりやすいから助かるけど。でも、今の話しやったら誰が犬を殺したかは分からんな」
「そうですね、すみません」
最悪、環境が変わって黒助が突然死と言うこともある。
「依頼を受けたからには、その辺りの調査もする。誰が犬を殺したか。それが分かってから、呪いにかけると言うことでええか?」
「はい、もちろんです。ありがとうございます。私に出来ることがあれば何でもします」
黒助の仇を取りたい。死の真相を知りたい。
運転する青蓮寺さんをしっかりと見つめると、青蓮寺さんは、ちらっとこちらに視線を寄越した。
「ららちゃん。その言葉ちゃんと覚えておきな。一度言った言葉は戻されへん。だから迷いは禁止。時間が経ってから人を呪うなんて、とか。気弱にも迷ってしまうぐらいなら、最初からやらん方がいい。筋は通しや」
「──はい」
「でもな、呪いはな。信じるか信じないかは人それぞれでええと思ってる。どうしようもない恨み辛みを抱いて泣きながら生きるより、ぱっと恨みがましい気持ちを晴らして、前を向けるならそれで結構やろ。人を憎まず、妬まず生きて行くなんて無理やからな」
「……ありがとうございます」
「なんてな。舌先三寸かも知れんで。もう、騙されんようにしぃや」
クスクスと笑う青蓮寺さんを見て、自然と微かに私の口角が少し上がり。
ふっと唇から笑い声と言うには、ささやか過ぎる声が漏れた。
それでも、久しぶりに私も笑うことが出来たと思ったのだった。
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