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高速を走り、途中休憩を挟み。
私が着の身着のままの状態で何も、私物がない事を知った青蓮寺さんは高速を降りてから。
街中の商業施設に寄り。ポンとクレジットカードを私に渡して買い物をして来いと、身の回りを揃えさせてくれた。
それはこれからのことを思うと、助かる。
少し気は引けたけども、素直に買い物をさせて貰った。
新生活を始めるような感じじゃなくて。
長期間の旅行に行くような感じで、シンプルなものを揃えさせて貰った。
それでも少し大きな荷物になってしまったけれども、ちっとも嫌な顔をしない青蓮寺さんにホッとしつつ。
カードを返して辿り着いた場所は、市内でも目立つ白く高い建物。高級タワーマンションだった。
車から降りて、マンション内へと案内されている間。建物のラグジュアリーさに黙ってしまうぐらい。まるでホテルに迷い込んだ気持ちになった。
呪術師なんて言うから、頭では勝手に家は古い日本家とか思っていたので、余計に面食らった。
「どうぞ、狭いところですが」と、開かれた青蓮寺さんの部屋の扉の向こう側は、黒とグレーで統一され、有名シティホテルかくやという内装だった。
「いや、あの。凄く綺麗な家で驚いてます」
「それはどうも」
おずおずと、広すぎる玄関に入る。
ここから見える玄関とリビングに続くであろう広々とした廊下はかつて、私が住んでいたワンルームマンションぐらいの広さはあるんじゃないかと思った。
青蓮寺さんはブーツの紐を解き、靴を脱ぐと横に備えられたシューズクロークに靴を置く。
ちらりと見えたクローク内にはブーツや革靴、スニーカー、下駄などがずらりと綺麗に並んでおり。どれもこれも高級品に見えた。
「早よ中に入りや。こんなご時世やからね。そこそこ繁盛させて貰ってる。でも、ここは僕のメインの仕事場じゃないから」
スリッパを進められて、お礼を言ってから家にお邪魔する。
「ここ意外にも家が? 凄いですね」
「今はwebでやり取りがほとんどやけども、直接会うクライアントも居る。そんな時はこんなタワマンより。こことは別に、古い日本家屋の方がハクが付くからそこで話しを聞くこともある。それに、呪術師がおいそれと本宅をひけらかすなんて、呪い返しはここにして下さいって、言うてるようなもんやしな」
スリッパに履き替えると、青蓮寺さんが荷物を持って行き。
「こっち」と廊下を歩き出すので、それにまた着いていく。
「確かに、日本家屋の方が雰囲気ありますね」
「そっちの家にヤバめの呪具とか呪物とかゴロゴロしているけど、この家にない訳じゃないから」
「!」
「あと、ここは一家心中があった事故物件。ええ子にしとかんと、何か障りがあるかもしれんから、気ぃつけや」
「は、はいっ」
こくこくと力強く頷く。嘘か本当かは分からないけど下手な真似はしたくないと思った。
それこそ、変な真似をしたら呪われそうだと思ってしまったのだった。
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