安楽城らら

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しかし、別に料理を作ることは嫌いじゃないし。何かやる事がある方がいい。 何もしなかったら黒助のことを思って、ずっと泣いてしまいそうだったから助かると思った。 その他には。青蓮寺さんの部屋や、札が貼っている部屋には絶対に入らないこと。 好奇心、猫を殺すと言われて、勝手なことなんかするものかと思った。 そもそも、札が貼られた部屋なんか入りたくない。 夜に関しては青蓮寺さんのメインワークタイムでもあるから、家を出ることも多いけど、私は二十四時前には就寝するようにと言われた。 一通り聞いて、別に気になるようなことは無かった。 むしろ自殺をしようとしていて、何も持ってない私に対して高待遇かと思われたが。 私の魂を差し出すと言うことが前提にある。そのことを忘れないようにしなければと思った。 説明を全部して。青蓮寺さんがはらりと、落ちた青い髪をすっと耳に掛けた。 「まぁ、ざっとそんな感じやね。同じ釜の飯を食う。これはオーソドックスやけども、他人と同調するには一番ええ方法かな」 「確かにそうですね」 「男女やったらもっと手短に、同調する方法はあるけどな」 青蓮寺さんがラムネをひとくち飲んでニヤリと笑うので、その同調方法とやらに興味を持った。 「へぇ。どんな方法なんです?」 「房中(ぼうちゅう)術。ここでは割愛しとく。暇やったら適当に調べとき」 そう言うと、青蓮寺さんはローテブルの下から白いノートサイズのパッドを私に渡した。 「これは?」 「この家でららちゃんは、他にも僕の仕事を手伝って。最低賃金は出す。いやぁ、さっきも言ったけど。僕の仕事そこそこ繁盛していて、バイト欲しいなーって思っていたところやねん」 「バイトですか」 「そう。この職業って色々と守秘義務が多いし。いきなり他人を信用するにはリスクがある。ある程度、身元も知れている人物じゃないとなーって、思っていたところやねん」 「でも、私。呪いなんて何をするか良く分からないですけど」 「あ、ちゃうちゃう。呪いのアシスタントをしてくれってことじゃなくて。事務作業。経費とかの計算とか、メールのチェック。買い出しとか、そんなん。ららちゃん広告代理店に勤めていたんやろ? それぐらいやったら問題ないやろ?」 確かに、今言われた内容なら問題なさそうだと思った。
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