安楽城らら

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ある日、突然奥さんが家に来たのだった。 ドアを開けるなり、罵詈雑言を言われ。 慰謝料を請求されたのだった。 上司はまた出張で、全く何も話しが出来ないまま。一刻も早く慰謝料を支払わないと世間にバラすと脅され、パニックになった。 それは困ると思い。不倫してしまった負い目から、奥さんの言う通りにしてしまった。 気がつけば、なけなしの貯金は全て慰謝料に消えた。それでも足りない、職場にバラされたくなければもっと金を寄越せと言われ。 借金までしてお金を渡した。 「……今思えば、すぐに渡す必要なんか……」 もっと冷静になれば良かったと、失笑してしまう。 そんなことを思っても後の祭り。当時はお金で解決出来るなら、それでいいと思った。 でも──精神的に参ってしまい。 仕事を連日休んだ。 その間、自宅に奥さんが詰め寄り。ひたすら責められ、謝罪する日々。 ますます心身共に疲弊した。 挙句。上司に渡していた合鍵を使われてしまい。留守中に飼っていた黒柴の黒助まで『売れる』と言われて取り上げられた。 ポロリと涙が溢れる。 「黒助ごめんね、本当に守れなくてごめんなさい」 ペットの黒助を奪われてしまったのが、何よりも堪えてしまった。
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