安楽城らら

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話がひと段落付いたところで。 私が勤めていた会社のことや、犬養夫妻の詳細なことを求められた。それを伝えた後に。 この家の簡単な案内を受けた。青蓮寺さんの私室には用があったら必ずノックをすること。返事が無かったら勝手にドアを開けない。諦めろとか。 などと、部屋を案内されて。 最後に私の部屋を案内してもらった。 その部屋は立派な部屋でベッド、テーブルに椅子が既に完備されていた。 どうやら来客用にと用意したものの、使う機会に恵まれ無かったと言うことだった。 因みに──。 一家心中があった部屋は、青蓮寺さんの部屋であると言うことを教えて貰った。 本当かどうかは分からないけど。 私の部屋じゃなくてとりあえず、ホッとした。 青蓮寺さんは、この後も仕事があるそうで出かけるらしく。 食事は冷蔵庫に何かあるから、適当に食べるようにと言われ。 最後に今日は好きにしたらいい。明日からよろしくと、青蓮寺さんに言われて。買い込んだ荷物を渡されて部屋に残され。やっと一人になった。 深くため息を吐きながら、よろよろと荷物を解くことなく。ベッドに倒れ込む。 すると布団からは柔軟剤の良い香りがした。 しかし、当然だけども私が今まで使用していた柔軟剤とは違うもの。 ごろりと横になり、天井を仰ぐ。 もちろん、天井の風景も違う。 「まさか、こんなことになるなんてね……」 こんなことになるなら、黒助の写真一枚ぐらい残しておけば良かったと思った。 黒助が居たという物証が何もないのが寂しい。
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