安楽城らら

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「ごめんね、黒助。黒助に助けて貰った命なのに、こんなことに使ってしまってごめんね。でも、私には良い方法が他に無くって」 もし、自分で黒助の仇打ちをと考えるけど。 素人の私が頑張っても、何も証拠も得られないのではと思った。 証拠を得ても、黒助を殺した人物がわかったところで。 「法律上ペットは『モノ』扱い……」 法律上に乗っ取り。正しい手続きをして、たくさん時間をかけて審議をしても。ペットと言う『モノ』を失った、慰謝料を数十万手にして終わるのが関の山だろう。 警察や弁護士に行くときに自分で調べていたから、それぐらいは知っていた。 それでもなんとかしたいと言う思いがあった。 しかし、本音は黒助を返せ。 それが出来ないなら、黒助を殺した相手が酷い目に遭えばいいと思っている。 だから廃ビルの上で。 私は呪いを頼った。 ふうっと、大きく深呼吸してベッドの柔らかなシーツに顔を埋める。 黒助が生きていたら。私の元に居たら。そんな切ない想いに瞳を閉じた。 そうするといろんな思い出が過ぎった。 色んなことを考え過ぎたのか。 どれもこれも、なんだか他人事のような感覚。今日、死のうとしていたのも。遠い昔の出来事みたいに思えてしまった。 奥さんに不倫の真実を突き付けられた、日々の苦しい思い出や。犬養国司に裏切られたと言う悲しみも、前までは思い出しては嗚咽しながら泣いていたけども。 今は目的が出来たからだろうか、沸々と怒りが静かにこみ上げた。 でも、今はなんだかとても眠たくて。感情の起伏さえもしんどくて。 一度寝てしまおうと思って、そのまま眠りについたのだった。
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