安良城らら②

1/5
前へ
/30ページ
次へ

安良城らら②

「今日は大根のお味噌、ご飯、きゅうりの浅漬け、明太子のだし巻き、アジの干物。素晴らしい。ほんま助かるわ。仕事の兼ね合いもあって自分で用意するの、最近しんどかったから」 今日は紺色のパリッとした着物を着た青蓮寺さんが、満足気にダイニングテーブルに着いた。 普通の動作なのに身長や見た目の良さがあって、どこととなく優雅に見える。 まぁ、見惚れて居る場合じゃないと。この人は雑誌の中のモデルとか。そう言った感じで、距離を取るのが一番だと心得ていた。 私も急須から、温かいお茶を淹れ終えて席に着く。 「お褒めの言葉ありがとうございます。でも、ニ週間もしたら慣れます。えっと今日、私は午前中に。神社に溜まった、依頼の手紙を護摩焚き奉納。戻ってから食事で、これまた溜まった名刺のファイリング。オカルト雑誌の寄稿の資料集め。それでいいですか?」 「有能で助かる。それでよろしく。あ、夜に話があるから時間頂戴」 話とは? とは思う前に青蓮寺さんがさらりと付けたした。 「犬養夫妻のことで、分かったコトがあった」 「本当ですか」 箸を持とうとした手が止まる。 青蓮寺さんは「嘘ついてどうするん」と、アジの干物の横に添えた大根おろしに、醤油をそっと掛けた。 このニ週間。与えられたことを、こなすことで必死だったが、黒助のことを忘れたことはない。 でも、私には待つと言うことしか出来なかった。 時折り青蓮寺さんから犬養夫妻の出身地。二人の仕事の経歴。私が去った後、会社ではどうだったかと聞かれた。 出身は確か、四国。 会社の経歴は詳しくは知らないが、本社から出張が多いと言っていた。 私が去った後の会社では、まだ勤めており。また出張があるとかないとか。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

143人が本棚に入れています
本棚に追加