安良城らら②

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食事が終わると、青蓮寺さんはご馳走様と。薄鼠色の羽織を羽織って出て行った。 私は食事の後片付けをしながら、つらつらと物思いに耽っていた。 キッチンの前に立って、さっと洗った食器達を食洗機の中に入れていく。 「この家には大分と慣れては来たけど……」 青蓮寺さんの呪術師と言う仕事も、何となくは分かって来た。 青蓮寺さんが呪いを掛ける現場とか、実際に見た事はない。それがちゃんと成就されたとかも知る由もない。 でも手紙での依頼やweb。その相談内容を見る機会はあった。 他にも呪いが成就したことによる。お礼の手紙、品物などを青蓮寺さんに見せてもらった。 依頼のほとんどは最初はどんなことをされて、苦しくて、辛くて、相手を呪って欲しいと書いてあり。 それが叶うことで救われた。報われた。人生やり直せるとまで書いてあったのを目にしたのだった。 それらを見ると、呪いは無いなんて言えなかった。 むしろそんな手紙や思いを知る事で日々。目に見えない呪いに期待している私がいた。 「そうだよね。恨み辛みをずっと抱えるなんて、しんどいもの」 私だって依頼者達となんら変わりはない。 今だに黒助の事を思えば、泣いてしまいそうになる。 こうやって犬養夫妻や勤めていた会社から離れていても、悲しみや怒りがどっと押し寄せて、ふいに心が痛くなってしまうこともあった。 だから、私達みたいに心に闇を抱えってしまった青蓮寺さんはある意味。 「救いなのかな……」 ポツリと呟きながら食器を全部、食洗機の中に入れ終えてスイッチを押す。 洗い終わるまでに、少し休憩と思い。何となくソファに座る気分にも慣れず。 そのまま後ろの冷蔵庫に背を預けて、微かに水音が聞こえる食洗機の音に耳を傾る。 「黒助。私、寂しいよ」 ぽろりと気持ちがこぼれた。
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