安良城らら②

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ここに来るまでは、呪いなんてダメだと思っていたけ。 でも呪いを依頼をしてくる人の悩みと言うのは、イジメにあった。 セクハラ、モラハラ被害にあった。 暴力を受けている。 大切な人が理不尽な目に遭っている。 などと、こちらの胸が痛くなるような深刻なもので。必死に何か、心のよりどころを探ろうとしている人が多かった。 その中には単純にアイツが妬ましい。別れさせて欲しいとか、自己中心的なものも多々あったけど。そう言う依頼は青蓮寺さんはキリがないと、ほぼ断っていた。 中には敢えて受けた方が良い。ほっておくと人が死んでしまうかも知れない。 行き過ぎた強い念を抱く依頼者に対しては、電話で相談を受けたり。 時には軽い呪いを相手に掛けて、呪いが叶ったと依頼者に見せ掛けて。 依頼者の溜飲を下げることで、大局的に見ると依頼もターゲットにされた人も青蓮寺さんの手によって丸くコトが収まっているという──ケースもあると、教えて貰った。 こうやって思い返すと、なんだか青蓮寺さんが良い人に見えるが。 「料金が高い。しかも私が印刷したコピーのお札を高く売りつけていることもある。一枚三万円ってぼったくりじゃない」 冷蔵庫に預けていた背中が痛くなり、うんっと背伸びをする。 「でも、それを売り付けているのはなーんか、怪しい業者の人ぽっいんだよね」 その呪いの札を購入する人の発送先を見る限り、変な名前の会社や得体の知れない宗教団体が多かった。 それもあって、印刷したお札の価格を知ってつい。青蓮寺さんに「これってアリですか」と聞いてしまったことがある。 すると青蓮寺さん曰く『鰯の頭も信心から。相手が小悪党なほど気が済んだら、喉元過ぎれば熱さを忘れる、そんな感じでな。その後は関心が違う事に移る。その方が小悪党に目を付けられた人も円満やろ』と、悪びれなく言っていた。 「青蓮寺さんは稀代の詐欺師かも知れない」 そんな風に思ってしまった。 でも、詐欺師は魂までは要求しない。 魂まで要求する青蓮寺さんはやはり、呪術師と言う言葉がピッタリと似合うと思うのだった。
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