安楽城らら

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警察に相談して取り戻そうとしても、厄介払いをされた。 弁護士に相談するのにも費用がいる。 そこでようやく、このままじゃダメだと思って。 なんとか黒助の為に、弁護士を立てる為にもお金を稼がなくてはならいと、社会復帰しようと失意のうちに職場に戻ると。 私が休んでいる間に、上司が出張から戻り。 私が上司を誘惑をしたと──上司に噂を流布され。 一方的に関係を断たれ。私の言葉に耳を傾ける人は居なかった。 そうして皆に白い目で見られ。嫌がらせも受けて居場所がなくなり、退職した。 やる事なすこと全て裏目に出ているようで、流石に生きるのに疲れてしまった。 せめて、黒助が売られた先の飼い主に大事にされていて欲しいと願うばかり。 もう明るく希望を持って、生きて行ける自信が何一つなかった。悲しい。苦しい。 上司を憎い気持ちはあるが、疲れてしまった。 もう涙も枯れ果てて泣くに泣けない。 風がまた強く吹き、かしゃんと金網を揺らした。 それはもう『逝け』と、言われているみたいで。分かっている。もう言われなくとも、死ぬから──と、足先に重心を傾けた瞬間。 「あー、こんな所におった。見つけるの苦労したわ」 「えっ」 後ろから突然の気だるい男性の声がした。 しかも流暢は関西弁に気を取られて、足を踏み留めて振り返ってしまった。
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