安良城らら②

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キッチンの片付けが終わってから。 予約していた神社の護摩焚きに向かい。その後、昼ごはんの食材を買いつつ、本屋に寄って。 取り寄せた、青蓮寺さんに渡す資料を受け取った。 手にズッシリと買い物袋の重みを感じるが、家の近くまで戻って来た。あともうちょっと、と手に力を込める。 この辺りは高級住宅街で、街並みが整理されて歩きやすく。景観もとても美しい。 今歩いている歩道も木々がしっかりと剪定されていて、お散歩には最適だと思った。 「お昼は、親子丼と朝の残りのお味噌汁とお漬物でいいよね」 手に持つ荷物を見ながら献立を考える。 二週間も経つとすっかりと、家事に慣れてしまったと思った。 家だって、事故物件だと最初に言われたけど。今のところなにも起こってない。呪われたモノとか、道具とかも見ていなかった。 それよりも家には青蓮寺さんと言う。得体が良く知れない、不思議な人がいるせいかも知れない。 どうしても、意識がそっちに集中してしまう。 「呪術師とか、言うけど妙に律儀なんだよね」 こう言った食費や雑費は全て青蓮寺さんから渡された、電子マネーが入ったカードで買っていた。 私は魂を差し出すとは言ったものの。 バイトの賃金を受け取るのは気が引けて。そこからせめて、光熱費を引いたものを受け取りたいと、青蓮寺さんに交渉していた。 特に欲しいものがある訳じゃない。 最初、ここに来る前に日用品は買い揃えて貰っている。それらが切れる頃には、私の呪いが成就していると思いたい。 残ったお金は黒助のお墓を作って貰えたら、それでいいと思っている。 呪いとは別に。 その他の望みらしい、望みと言えば──。 「もし、出来るなら国司(アイツ)にビンタの一発でもかましたい、かな……」 ふと、こぼれしまった言葉にはっとした。 一気に胸がざわつく。 あんまり考え無いようにしていたのに、やってしまったと思った。 生活が安定した半面、こうして怒りと言うか。負の感情──不安定な気持ちが突如、表に出て来ることがまだあった。
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