安楽城らら

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それは私の希望で、現実はいつだって残酷なのに見ぬ振りをしていた。 そう思うと今まで凍りつくように、冷え固まっていた心に熱が生まれた。 それは埋み火の如く。表面では分からなくて、中にジリジリとした熱が、表面に出てきたようだった。 決して熱い生への希望とかでは無く。どす黒く、重く、悲しいもの。上司への憎悪。その奥さんへの恨み。やるせなさ。自分の浅はかさ。 黒助の死を意識したことによって。心の奥底に眠っていた負の感情がやっと、表面に出てきたと思った。 一度生まれたしまった、黒い熱量は私の全身を一気に体を駆け巡り。 その思いのまま、喋る。 「どんな事をしてでも払うから。お願い。黒助を殺した奴を許せない。黒助を殺したやつを呪って欲しい。生きているより、辛い目に合わせて。その為だったら──私どんな事でもするからっ」 がしゃんと金網を揺らすと、青蓮寺さんはやっとこちらに向き直った。 「へぇ、さっきまで死んだ魚の目ぇ、してたのに。今はギラギラやん。そっちの方がええ。分かった。料金払ってくれるならいつでも呪うで。ご利用心よりお待ちしております。あ、名刺置いて行くわ。じゃ、」 青蓮寺さんは懐から名刺を取り出したかと、思うと。 ピタリと止まって。細い顎に手を掛けて何か考え始めた。
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