4. 神の怒り

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 龍心は泣き出したい気持ちになった。黒龍は4年も神殿に閉じ込められた挙げ句に、人間達の都合で愛する妹に会うことが出来ず怒り狂っているのだ。  神輿は側の民家の窓硝子に激突し、飛び散った硝子の破片が目に刺さった担ぎ人がぎゃーと悲鳴をあげ蹲った。更に神輿は路肩で停車していた山車に突っ込み、逃げ遅れた二人の太鼓役が倒れた8tもの重さの山車の下敷きになった。  風雨は嵐の如く激しさを増し、落雷で山の上の電波塔からは黒い煙が上がっていた。  見物人は泣き叫び逃げ惑った。阿鼻叫喚の地獄絵図とはこのことかと龍心は思った。  ぎじむ神輿を20人程の男達で押さえつけどうにか学校の校庭に辿り着いた。校庭に神輿が置かれたとき、満身創痍だった男達は皆一斉に力尽き地面に倒れ込んだ。祭りの初めだというのに既に複数の死人や怪我人、行方不明者が出たこの時点で誰も中止を叫ばないことが却って異様に思える程だった。
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