4. 神の怒り

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 祭りが終盤に近づいてきた。龍心はこれ以上悪いことが起こらないようにと願っていた。その悪いことが自分や家族や友達等大切な人達に降りかからないようにとも。  最後の出し物は龍ヶ崎町名物大龍権現だ。  ショベルカーを使って頭部の長さ5m、高さ10m、重さ2tの巨大な龍権現を操作する。巨大風呂敷の中で重機を操るのはこの道8年のベテラン、龍心のクラスメイトで友人である佐藤謙也の父謙介だった。  テンポの遅い囃子に合わせ、大龍権現が今にも空に届きそうな巨体を畝らせ踊る。ショベルに繋がれたその頭が振り下げられる時、突風が生まれ砂塵が巻き上がる。拍手と歓声に包まれる中、龍心は気が気でなかった。  舞が後半に差し掛かった頃、頭の重みでショベルカーがぐらっと右側に傾いた。 「逃げろぉーー!!」  誰かが叫び皆が駆け出した。3tの材木で作られた黒龍の身体はゆっくりと地面に向かって倒れ、どおおんという地鳴りとともに校庭が揺れた。大量の砂埃が舞い、誰かの耳をつんざくような叫び声が聞こえ駆けつけると、頭の下敷きになった若い男性の姿が見え龍心は身が竦んだ。    すぐに男達が集まり皆でその重い頭を持ち上げ救出したが、男性は血を吐き全身の毛が逆立って既に虫の息だった。  今日何度目か分からない救急車が到着し男性が担架で運ばれたが、もう助からないだろうと皆感じているようだった。
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