9、喧嘩しようじゃないか

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9、喧嘩しようじゃないか

 彩花は、竹内が自分の部屋で療養を始めた頃からスマホで写真をよく撮るようになった。 竹内は彩花がプライベート写真を撮ることが余り好きではない事を知っていたので不思議だった。なので、彩花に訊いた。 「彩ちゃん、何を熱心に写真に撮っているの?」 「証拠写真よ。あんたの奥さん、頭おかしいから不倫で訴えられたら証拠品で提出するのよ。不倫相手が介護してました〜ってね。これらの写真を法廷でばら撒いてやる!」 それを聞いた竹内は力無く「ははは。。。」と笑った。 「反対しないのね。やる時はやるわよ!貴方達夫婦の本当のあり方は他人には分からない。私にだって分からない。でも、私には私の言い分があるの。少なくとも、容体が安定していない術後まもない夫を見捨てるなんてことは私にはできないわ。それをするくらい憎い夫なら、とっくに別れているわよ。もしも、貴方が死んでも私は慰謝料請求される可能性が長い時間残るのよ!自己防衛よ!」  彩花は分かっていた。この夫婦に離婚しなさいと言っても無駄なことを。竹内と10年以上も付き合っているのだ。理由は分からなくても「離婚できない何か」が竹内夫婦の間にあることは。 竹内の世話をして仕事も先が見えてしまった。それでも後悔はしていない。   でも、彩花は自分には何のやましいところは存在していないと思っていた。彩花は、竹内夫婦の財産を侵害するような高額なものはもらっていない。逆に彩花の方が持ち出しているくらいだ。
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