2、主導権を握る

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2、主導権を握る

 30前にバツイチになった。結婚でキャリアを分断しなかった彩花は仕事に打ち込み30過ぎでデザイン室のチーフになった。 彩花が務める会社は、シロモノ家電のメーカーだ。そのデザイン室が彩花の職場だった。シロモノ家電は膨大な数の製品がモデルチェンジを繰り返す。デザイン室のみで製品のデザインをすることもあるが、ほとんどは独立系のデザイン事務所との共同の仕事になる。  結婚前より離婚してからの方が彩花は恋愛に対して貪欲になった。社内の男には絶対に近づかない。スキャンダルはゴメンだ。彩花は、この大企業の家電メーカーで女性初の執行役員になろうという野望を持っていた。  彩花の彼氏は独立系デザイン事務所を通じて知り合った男が多かった。仕事相手の会社の人間は避けた。そして、必ず相手は既婚者にした。結婚願望は、最初の結婚で満たされた。結婚してみたら結婚という制度にバカらしさしか感じなくなった。 人生の彩りとしての恋愛は、妻にバレるのを恐れるような男の方が扱いやすい。  プレゼントをしたがったり、食事も割り勘にしない男は早めに切った。払った金の分だけ男は女に対して支配的になる。彩花は、支配されていると感じるものは全て排除しようと思っていた。  男女が知り合って、心を惹かれて心を求めあい、最後は身体を繋げる。  恋愛のクライマックスはここで終わりだ。 会うたびにセックスして、セックスして、セックスする。 そんなもの飽きて当たり前だ。大体3年で飽きる。飽きたら別れる。決めるのは彩花だ。  歳を取ったら、そういう相手もいなくなるかもしれないという恐怖もあったが、年齢を重ねるにつれ、そうではない真実(こと)を知った。間に「結婚」という面倒臭いことがなければ幾つになっても恋愛はできる。
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