3人が本棚に入れています
本棚に追加
竹内が美術館に誘ってきた本意は分からない。自分の自意識過剰かもしれないと彩花は思い直した。そしてスマホから空いている日程を竹内に伝えた。
美術館の日、待ち合わせの場所に行ってみると竹内の会社の若いデザイナーも一緒だった。
「自惚だったか」と彩花が思っていたら、今度は竹内からランチのお誘いがスマホに来た。美術館の日、浮世絵鑑賞の後、みんなでお茶をした。その場で竹内が既婚者であることも、2人の子持ちであることも、彩花より5つも年上であることも知った。
きっと竹内は、私と個人的に付き合いたいのだと彩花は、この辺りで気がついた。既婚者は別に気にならない。むしろ大歓迎だ。発覚する前に上手く別れる。いつもの手だ。でも、今は前の奴とのカタが付いていない。
「困ったなぁ」という言葉が口に出た。
結局、カタはつかないまま竹内とランチをした。
食事が終わりお茶を飲んでいるときに彩花は竹内に言った。
「私ね。付き合っている男性がいるんです。でも、別れたいんです。だって彼方は既婚者なんですよ。私は悪者じゃないですか。拗れちゃって困ってるんです」
竹内は、あっけらかんとそんな話をする彩花に一瞬引いた。下を向いてしばらく黙っていた。
竹内は顔を上げると視線を泳がせながら彩花に言った。
「私も2年前までお付き合いしていた女性がいました」
最初のコメントを投稿しよう!