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7、優先順位
竹内は術後僅か19日で退院させられることになった。手術の執刀をおこなった病院は心臓血管外科の日本でも有数の専門病院で、重篤な緊急性のある患者が関東一円から運ばれてくる。療養状態に入れる患者は退院させる方針だった。
普通なら療養病院に移るのだが、竹内が倒れた頃はコロナの流行で療養病院の空きが無かった。
妻、清美は夫の自宅療養介護を拒否した。竹内も自宅に帰るのは嫌だと言った。結局、竹内は一人暮らしの家に帰ることになった。
彩花は、その話を聞いて驚いてしまった。開胸手術を受けたばかりの竹内の一人暮らしには絶対に反対だった。ただの「不倫相手」の自分に出来ることは何もないと思っていたが、そんなことはないと気づいてしまった。
結婚よりも大切なはずだった仕事でさえ、竹内より優先順位は下だった。
たくさんの仕事をこなし、子供も産まず、上だけを見て生きてきた。女性初の執行役員になりたかった。
今、やっとデザイン室室長、部長になった。後、少し……だったのに。
考えなくても答えは出ていた。
彩花は、長期休暇を願い出た。
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