艶ある嫌悪と白い滑

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「スミ……カスミ……」 伽藍堂な頭の中で雪くんの声が、木霊して聞こえてくる…… 「カスミ……カスミ……」 その声は確かな現実味を帯びて、より明瞭さを増しながら近づいて来ている。 「カスミ……霞。」 ハッキリと彼が私を呼ぶ声を捉えた私は、彼の膝枕の上に横たわっている全身の感覚を信じ、そのまま微動だにせぬまま、瞼だけをゆっくりと開いた。 そこには優しい笑みを浮かべた春君が、両手で私の顔を愛おしそうに包み込んでいた。 「春君……?私、また……」 激しい息遣いで続けて話そうとした私の口の上に、彼は彼の大きな左手でやんわりと覆い隠して蓋をした。 「落ち着くまで話さなくていいよ。」 私は震える両手で、私の口を塞いでいる彼の腕をきつく抱きしめた。 そして私は入り乱れる情緒に耐え切れなくなり彼の右太腿に顔を埋めた。 パタパタと大きめの雨粒が窓を打つ音だけが、静まり返った部屋の中に途切れる事無く響き続ける。 私は噎せ返るような湿度の中、その嫌に魔術的な環境音(アンヴィエント)に耳を欹てていた。 やがて雪君は私の口から覆いを外すと徐に顔を近づけて来て、優しいキスをした。 私の青ざめた顔に赤みがかかったのを見た雪くんは肩でクスッと笑いながら言った。 「目が醒めて良かった。霞、また魘されてたから。」 彼の笑った顔は可愛い。 その屈託の無いピュアな笑顔は近くで見ているとなんだかこっちが恥ずかしくなってくるのだ。 無自覚の間にも私を魅了する彼の存在に愛おしさを感じる半分、可愛さ余って憎さ百倍ともいえる腹立たしささえ感じる程に彼のことが好きだった。 嬉し恥ずかしい感情が沸々と湧き上がって来て、さっきまでの悪夢の恐怖が和らいていくのを感じた。 「また、見たの……蛞蝓の夢。」 それを聞いた雪くんは哀しそうな顔をして見せた。 だが、彼は再び優しい手つきで私の顔を撫でながら耳元でそっと囁いた。 「大丈夫だよ。ここに蛞蝓なんかいないさ。」 「とても気持ち悪くて、思い出すだけで吐きそうになるの。」 それを聞いた雪君は聞くが早いか、私をベッドの上に仰向けに寝かせた。 「全部忘れようよ。今からさ。」 その後私達は蛞蝓の滑りよりも粘度の高いを愛瀬を楽しんだ。 口腔、耳腔、陰部ありとあらゆる場所にお互いの蛞蝓を這わせて息を荒げた。
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