悲劇

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悲劇

しかし、幸せは突然壊される。 「オリヴィア!ここにいるんだろう!」 ドンドンドン!と扉を叩く音が響く。 オリヴィアが扉を開けると 死んだはずの彼女の叔父が 立っていた。後ろには斧を持った男が立っている。 「お前が俺の姪を誘拐した吸血鬼だな!」 オリヴィアの横に立つエルヴィスに向かって 彼は唾が飛ぶ勢いで怒声を上げた。 「叔父さん!違うの! 彼は屋敷に迷い込んでしまった 私を育ててくれたの!」 オリヴィアが弁明するもその声は 怒りで染まった叔父には届かない。 後ろにいた男がエルヴィスの胸を斧で斬りつけた。 愛しい人の胸元が赤く染まっていくのを 見てオリヴィアは悲鳴をあげた。 エルヴィスは地面に倒れ込み、懸命に治療する オリヴィアに向かって力なく微笑んだ。 「わたしのことは、死んだと思って 叔父と一緒に行け」と。 それを聞くや否や叔父は嫌がるオリヴィアの腕を掴み 城から出ていった。 扉が閉まる寸前、エルヴィスは自分に向かって 涙を溜めた瞳で悲痛に手を伸ばす オリヴィアを見た。 これで、良かったんだよ。オリヴィア。 幸せになりなさい。 エルヴィスは床を這って自分の寝床である棺の中へ と息を切らしながら入った。 眠りにつけば傷は癒える。 きっと、今回は50年どころではないだろうな。 わたしが次に目覚めたとき、エルヴィスは この世にいないだろう。 オリヴィアどうか、幸せに。 そう思いながらエルヴィスは 黒い世界に身を委ねたのであった。
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