転校生

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「遅くなっちゃったね。部活大丈夫?」 私と麻里絵は急ぎ足で廊下を歩く。 吹奏楽部が音出しをしている。 下手くそなホルンの音が私の笑いを誘った。 「この音、私の後輩の音」 と私が言うと 「南風さん吹奏楽部なの?」 と嬉しそうに聞いてきた。 「うん。マリマリは何部にしたの?」 「私、女子ソフトボール部にしたの」 意外だった。 麻里絵は誰が見ても淑やかで、華道部や茶道部。手芸部などが似合う。 「スポーツ好きなんだね?」 「うん。大好き。三鷹ではね、ピッチャーやってたんだよ」 「ええっ!?ボール投げとったん!?」 驚きすぎて、思わず方言が出た。 私の急な方言に麻里絵が笑った。 そして、茶目っ気たっぷりに 「そう。投げとったんよ」 と、言い返した麻里絵に私は笑った。 「南風さん、私に合わせて標準語使ってくれてる?方言でもわかるから大丈夫だよ。むしろ、ここの方言好き」 麻里絵のこういう、何でも気づいてしまう所に私は感動する。 でもそれは同時に彼女が幾度も幾度も転校を繰り返してきた境遇から得たものなのかもしれなかった。
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