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麻里絵とはその後もよくバスで会った。
けれど、朝のラッシュ時に混雑しているバスの中ではお互いの席に近づく事すら出来ず、私たちはただ、窓越しに手を振って笑顔を見せ合う事だけしか出来なかった。
その後、私は同じ高校の友人たちとアルバイトを始めたために、帰宅時間が遅くなり、麻里絵と偶然出逢う事すらなくなってしまった。
月日が流れ、私が次に麻里絵と話したのは、大雪注意報がニュースで流れていた冬の朝だった。
紺のコートに赤いマフラーをした麻里絵が頬と耳を赤くして、バスに乗り込んできた。
「あ、南風さん」
彼女は相変わらず"生きた天使"みたいな笑顔で私に近づき
「お隣いい?」
と、可愛らしい八重歯を見せて微笑んだ。
「すっごい降っとるね」
「ねー、すごいね」
「めっちゃ積もっとるし」
「でもなんか嬉しい」
「嬉しい?」
「うん。東京はこんなに雪積もらないから」
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