転校生

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へぇ。そういうもんかなぁ。 私は曇ったガラスを手袋をはめた手で、キュキュ、と拭いた。 牡丹雪が、斜めに降っている。 晩は昨日の倍くらいは積もりそうだ。 「あ、そういえば、マリマリは進学?」 賢いから当然大学へ行くんだろうと思って聞いた。 「うん。進学」 「やっぱり。私は就職。ちなみにもう内定もらった」 「ほんと?すごいね。決まるの早くない?」 「クラスで一番やったんよ」 私が自慢気に言うと、彼女は冷やかしもせず、うんうん、と頷いて 「南風さん明るいし面接で受かりそう」 と素直に褒めてくれた。 彼女が降りる停留所にバスが停まると 「じゃ、またね」 と赤いマフラーを首に巻き直してバスを降りていった。 私は曇った窓ガラスをまたキュキュ、と拭き "ばいばーい" と声を出さずに言って手を振った。 麻里絵も笑いながら、同じように "ばいばーい" と唇を動かして手を振っていた。
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