転校生

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あの大雪の日からずっと麻里絵に会うこともなく私は就職し、数年経って私は遠距離恋愛中だった彼と結婚した。 彼が住んでいる鎌倉で中古の一軒家を購入して新婚の住まいとした。 その一軒家に以前住んでいた方は草花が好きだったらしい。 縁側から見える庭には紫陽花の花が至る所に地植えしてあり、梅雨の時期はとても見事な紫陽花畑になる。 関東地方がもうすぐ梅雨明けか、というニュースが流れていたある日、縁側の磨りガラス越しに赤い傘を持った人が立っているのが見えた。 不思議に思ってそっとガラス戸を開けると、赤い傘の主が振り向いた。 「マリマリ!?なんで?」 私は突然現れた麻里絵に驚き、叫んだ。 「思った通りの反応ありがと」 と、麻里絵はクスクス笑った。 「びっくりしたぁ。急に来るんだもん。あ、お茶飲んでいく?」 と、私が部屋へ促すと 「三鷹に用事があって。鎌倉にいる南風さんに会ってから行こうかな、って」 と、彼女はとても時間が無さそうだった。
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