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新聞
俺は一日だって休まずに届けているんだ。
結構いい加減な性格の奴が多いと思われがちだけど、新聞はちゃんと毎朝届くだろう?
最近は新聞をとる人もめっきり減ってしまったけど、それでも配達先には新聞を待ってくれている人がいるんだ。
だから、俺は今日も届けたいんだ。
道は冠水して風はビュウビュウと吹きバイクも進めなくなったけれど。
なんだって、配り始めてからこんなに雨が強くなっちゃったんだよ。
あと2件なんだ。
でも会社から連絡が来て、とにかく安全に戻って来いと言われた。
すまなかった。鈴木の爺さん。
あんたは一人暮らしで新聞が友達なのに。
届けたかった俺の想いだけは汲んでくれ。
もうバイクも動かない程の水が膝下までうねっている。
なんとか水の来ないところまでバイクを押して、ようやく販売店に帰りついた。
鈴木の爺さんのいえに電話をしたら爺さん、
「無事でよかった。あんたが無事なら次からまた新聞が届くから。」
って言ってくれたよ。
俺は、また明日、配達できなかった家の分は今日の分の新聞も持って配達に出る。
新聞を届けたい想いは誰にも負けないのさ。
【了】
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