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「藍さんはどっちだと思いますか。あの女中さんは白か黒か。」
「ちょっと先生。藍さんに話を振るのは無しですよ。」
先生から急に捜査の意見を聞かれ面を食らってしまうと同時に、助手くんの一言に疎外感を覚える。
いつ雑用を頼まれてもいいように大抵側にいるので、事件内容はあらかた頭に入っていた。
「資産家の西園寺様の別荘に飾られていた有名な絵画が何者かに盗まれたんですよね、今回の事件。毎週末、西園寺家の皆様方はこちらの別荘で過ごされていて、前泊で女中さんが掃除などの雑務をされに先に来訪されているので、盗む時間は十分にあったと思います。先週までは絵画は飾られていたこと、西園寺家の方々と女中さん以外の指紋は出なかったと聞きましたし。その絵画をどこに隠したかは気になるところですが、黒なんじゃないですか?」
「ん?そうだね。」
先生はきょとんとした顔をして、助手くんは参ったと言わんばかりの表情をしている。とんちんかんなことを話してしまったのだろうか。軽率に素人推理を語ったことを後悔し、恥ずかしさで全身が熱くなる。
「先生のせいですよ。どう責任とるんですか。僕は止めましたからね。」
助手くんがため息をつく。
「そうだね。これは私が悪い。」
先生が深く息を吐き、私に向き直る。
「女中さんが窃盗犯じゃないかって話だと思ったんだよね?女中さんが犯人かどうか。白か黒かって。」
「はい。それ以外にありますか?」
頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになる。
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