目覚め

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目覚め

真黒な天宙(そら)…何も見えない。星雲や星々も見えない、ただ真っ暗なところだった。わたしは夢を見ていた。わたしはそんな真黒な空間を、ひとり漂っていた。 とつぜんカプセルを叩かれる音がして目が覚めた。気がつくと、そこはまたもとの宇宙船だった。なにも変わっておらず、計器も正常だった。いやちょっとちがった。正常過ぎた。船体に何か所か穴が開いていたはずだったが、それがなにごともない状態だと計器が示していた。いったいどうしたんだろう?もしかしたらあの異星人が修理してくれたんだろうか?そんなまさか、とは思ったが、それしか考えつかなかった。 「まあ親切にもほどがあるわね…」 わたしは声に出してそう言った。カプセル内にわたしの声が響いた。そして急にさびしくなった。こういうときは誰かと話したい。 「ねえコンピュータ。聞いてる?」 「お呼びですか?」 「いままでのことは記録した?」 「なんのことです?」 「やだ、あんた見てなかったの?異星人」 「わたしは『オズミック エルイー53システム』。わたしの認識できないものは登録できません」 「あんたの認識を聞いてんじゃないわよ。さっきわたしに起きたことを記録したかって聞いてんのよ!」 「精神状態不安定を確認。強制睡眠シーケンスを作動」 「ちょ、ちょっと待ってよ!眠るのは嫌!また真黒な夢のなかで漂うのは嫌よ!」 「数を数えてください…」 「だから眠らせないでって…お願い…よ…」 また真黒な世界に戻って来た。いつまでこうやってりゃいいんだろう。もう死にたいわ、わたし…。
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