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バスに乗っていたら、急に妙なアナウンスが流れた。
「駅前で三人を乗せて発車したバスに、次の停車場で一人、その次の停車場で二人が乗り込みました。そこからさらに次の停車場で三人が乗りました。
今、バスの中に乗客は何人いるでしょう」
ええと、三人乗客がいたバスにまず一人、次に二人、さらに三人追加された訳か。
乗客と言っているから運転士は数に入らない。となると答えは九人だ。
辺りを見回すと、他の客達も簡単な問題だという顔をしていた。それでも念のため、俺と同じく、乗客の数を確かめている。
あっちに一人、あそこに二人、、あそこに二人、後ろに四人、こっちに一人。ほら、九人…あれ?
バスの乗客の数は十人。計算が合わない。
いや別に、さっきのはあくまで、バスの乗客が何人いるかという計算問題で、実際の乗客数とその答えが違っていても、何の問題もない。
でも、だったらどうして、突然あんなアナウンスが流れたのだろう。
首を捻っていたら、また運転士の声が車内に響いた。
「乗客の数は九人。なのに車内には十人いる…さて、次の問題です。十人目は客ではなく、皆様を餌にするために乗り込んだ化け物が、人間に成りすました姿でした。その化け物が本性を現し、皆様に襲いかかったら…終点に着く頃、バスの乗客は何人になっているでしょうか」
計算をするまでもないその質問。恐怖と混乱が乗客の顔に浮かぶ中、一人の姿が豹変する。
運転士が言った化け物。それが隣の客を引き裂いた。
悲鳴が上がるがバスは停まらない。窓から逃げようとしたけれど、開かないし、叩いてもびくともしない。
簡単すぎる計算式。終点に着いた時、バスの『乗客』はゼロだよ。
その答えが脳内に宿った直後、俺の首筋を鋭い何かが掻き切った…。
計算問題…完
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