感情喰い

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 男は女の子に歩み寄ると、女の子は一歩下がる。 「おい、いい子だから動くな。悪いことも痛いこともしない。だから、黙って話を聞け」  男は一瞬姿を消し、その凄い速さで女の子に詰め寄りと左手で抱き締め、右手を左手の頬に添える。左手は普通の腕なのに、右手は骨。血管や皮膚、肉さえもない骨そのもの。 「ひっ……」 「おっと、そうはさせねーよ」  彼は女の子の口を手で左手で塞ぐと「叫んだらどうなるか……教えてやろうか? 殺す――ってか、お望みを叶えるだけだけど……」クスクスと笑いながら右手を首元へ。 「絞め殺すか。へし折るか。何がいい?」  ゆっくり塞いでいた手を退ける。すると、「死にたくない!!」と泣きそうな震えた声で必死に何度も繰り返す。 「死にたくない……死にたくない……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」 「チッ死にたくないなら、別にいいけど」  あっさりと簡単に女の子を解放する。 「お嬢ちゃん、逃げる前に少しお兄さんのお願い事聞いてくれるかな?」  コンクリートに膝を付き、目線が同じになるように高さを合わせる。右手で顔を隠していた仮面に触れ「僕の目見てくれるかな?」とゆっくり外した。   その瞬間、「きゃぁぁぁぁぁっ……」と甲高い悲鳴。それと共に、男の手からカランっと仮面が抜け落ち、狂ったように笑い出した。
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