0人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
「アハハハハハッそんなに怖いかなぁ? それにしても甘美な感情だね。人の感情ってこんなに美味しいんだ。いや、子供だから甘いのかな?」
落ちた仮面を手に取ると「おい、人体模型」と聞き覚えのある声。朝、玄関のドアを叩きに来たあの男の声だ。
「……邪魔すんなって、卯田 和真さん居たんですか? 嫌だなぁー。アハハッ仕事終わったんで帰りまーす」
左手で顔を右側を隠しながら、外灯を避け歩いていく。
「待て、喰ったのか?」
「はい、喰べましたよ。一応、犯罪関連の感情。この子には、欲はなかったので……」
卯田の問いに足を止め、サラッと抵抗なく振り返る。
「その姿を見ると、吐き気がする。さっさと帰れ」
男を追い払うように手を動く和真。
それもそのはず。
『人体模型』と呼ばれているこの男。
体の半分は骨、その半分は普通の人間。いわゆる人外。化け物なのだ。右半分は骨であることを服で誤魔化し、生きている心地を味わいたいと左半分はズボンの裾や腕捲り。顔は右半分だけ仮面で隠し、黒い大きめマフラーで口元を隠している。髪は黒で目元を隠すようにやや長め。身長は175センチぐらいで、年齢は25歳前後。身元も血縁者も名前すら分からない。
そのため『人の感情や欲を喰らう』ことから『感情喰い』。もしくは、半分骨だから『人体模型』とも呼ばれているのだ。
最初のコメントを投稿しよう!