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突然、ズボンのポケットに入れていたスマホが鳴る。メールだと短いバイブが2回。LINEだと一回。電話は長いバイブが何度か鳴る。
「はい、もしもし? 『帰れ』って言ったのはアンタでしょ?」
電話の主は和真だった。声が女性のように少し高めの人体模型に対し、和真の声は少し低い男らしい声。25歳の彼より4つ上のお兄さん肌。剣道、格闘などが得意なため、悪ふざけで絡むと痛い目に遭う。怖くて恐れる人だが、彼にとっては唯一の人間友達、頼れる、甘えられる人。
「ん? どこいるかって……えっとね。見知らぬ家の屋根やビルの屋上を――アハハッだって人混み嫌いなんだもん」
大人にしては、子供のような幼さがある。いや、少しワガママなのかもしれない。『大きな子供』と言ったところだろうか。
和真は女の子を家まで運ぶと、その家族に何度も頭を下げられたようで「気まずい」と電話越しで呟く。
でもそれは毎度のこと。それが彼の仕事なのだ。
「和真はどこいるの? 僕と鬼ごっこしようよ」
電柱に深く腰をかけ、足をユラユラと貧乏ゆすりのように動かした。
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