感情喰い

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 店はカウンター席のみ。全部で椅子は八脚。そして、バーテンダーの背後にはズラリと酒が並んでいる。少し暗めの店内にほんのり淡い照明。大人っぽい雰囲気だ。バーテンダーは和真と同じぐらいの年で幼なじみだとか。 「こんばんは。今日は連れがいるんだ。  いつも一人なのに珍しい……」  シェイカーを振りながら、和真に軽く挨拶すると中身をカクテルグラスに注いだ。 「どうぞ。ジンが好きなんだよね?」  シュワシュワと炭酸が泡を作り、透明な色が特徴のカクテル。飾り付けに切ったライムをガラスに添えて――。  苦味が特徴のジントニック。  和真が一番好きなカクテル。  カウンターに和真が座ると注文していないのに、酒が出てくる。 「……酒は得意じゃないが、お前のなら飲める」 「常連さんだから、何がお好みなのか知っておかないと。で、連れと会うのは初めてだけど……何か飲むかい?」  和真の隣でニコニコと笑っている人体模型に、微笑み返すバーテンダー。しかし、彼の問いかけに答えたのは人体模型ではなく和真。 「コイツはかなりアレルギーあるから、外食は一切しない。飲み物も飲まない……悪いな」 「それは大変だね。じゃあ、和真だけでいいの? なんかかわいそうな子だけね」 「……かわいそう。確かに『ある意味』そうかもしれないな」
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