名無し

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 カーテンの隙間から徐々に射し込む太陽の光。男は光を避けながら、洗濯バサミで光が漏れないようカーテンとカーテンを挟む。再びパソコンに視線を向け、隣に置いてあった黒いマフラーと右半分だけの仮面。マフラーで口元を隠し、仮面で右半分を隠す。  見た目からして怪しい人。見られたくないモノでもあるのだろうか。普通の人ならカーテンを全開に背伸びをする。なんてシチュエーションが一般的だが――彼は違っていた。  夜行性のように暗い場所を好み、必要な時にしか外には出ない。のんびり胡座をかき、スマホを弄っているとガンガンガンッと物凄い強さで玄関のドアを叩かれる。 「ん、あぁ……あれね。はいはい、行きますよ」  だらしなく右足ズボンの裾を引き摺り、ガチャッと左手でドアを開ける。そこにはスーツ姿のサングラスの男が一人。日傘をさし、彼に光が当たらないように気を使っている。 「おい、人体模型。報告しろ」 「……特になし。なんかあったら電話かメール、LINEのどれかを送ってあげるよ。あのさ、ドラキュラじゃないから。あまり好きじゃないだけで、灰になるわけじゃない。もしもし、聞いてる?」  彼の言葉を完全無視。男はタバコをくわえると「じゃあな。あんまり大事にするなよ」 とさっさと姿を消してしまった。
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