感情喰い

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 一気にジントニックを飲み干すと「今、誰かと会えるなら会ってきてもいいぞ。ただし、ここ周辺」とライムにかぶり付く。 「うーん、条件付きだと難しいかな。ちょっと待ってね」  フンフンフーンと鼻歌。スマホの画面をスクロールしては、タップを繰り返す。そして――「あっ」と大声をあげるとバーから慌てて出ていった。 「……自分で帰れよ。俺、飲酒運転で捕まるからな。悪い、キウイジン頼む」  バーテンダーの前にトンッとグラスを置くと「はい、いいの? あの子一人にしちゃって」と心配そうに外を見つめる。 「……どうせ、仕事だ」 「あの子も警察?」 「違う。この世界の職業で例えるなら『カウンセラー』みたいなもんだろ。まぁ、『感情』食べるらしいから『感情喰い』」 「感情……喰い。ホラーか何か?。都市伝説に出てきそうな名前だね」 「いやいや、出てこねーだろ。アイツには名前がない。『人体模型』とか『感情喰い』とか正直呼びにくい。なんかいい名前ないか?」  いつも貶すように『人体模型』など口にしていた彼だが、かなり名前には困っているらしい。頭を抱えては、スマホでいい名前がないか検索をかける。しかし、合う名前が見つからないのか、頭を抱えては「ハァー」と深い溜め息をついた。
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