感情喰い

16/17

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
 彼は男の足を掴むとゆっくり肋骨から外す。服で隠していたつもりが、蹴りやらパンチやらで一発でバレてしまう。  左ならまだしも右は――。  正直、戦闘を控えて穏便に済ませたいところ。腰を抜かして動けないなら――と仮面に右手を添える。しかし、“ここぞ”というタイミングでスマホが鳴る。 「……はい。もしもし?」  電話に出ると相手は和真。バーから出ると胸騒ぎがしたのか、電話を掛けてきたらしい。ここ周辺の刑務所にいた男が脱獄した――とかなんとか。姿容を聞いていると、腰を抜かしている男と一致する。 「へっ、指名手配犯? なにそれ初耳なんですけど……ってさぁ、言いニクいんだけどぉ。僕の顔見て腰抜かしてるのよ。そのおっさん。んでんで、蹴りがさぁ~。肋骨に引っ掛かって……アハハハハッウケるでしょ?」  一人、腹を押さえてバカ笑いする人体模型。すると、ピタッと笑い声は収まり、恐ろしいほど静かになる。 「喰っていい? ねぇねぇ、コイツの殺害衝動ってヤツ。美味しそうなんだよぉ。なんだろ、罪悪感なのかな? それとも、ただ人を殺したいだけなのかなぁ?」  初めはドスが聞いた少し低い声。だが、段々高く。そして、やけに興奮しているのか語尾が裏返る。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加