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和真に手伝ってもらいながら、服を着替える。左は良くても、右が骨に引っ掛かり苦戦。普通の人が着る時間の何倍もかかった。
「ズボンは自分で履けよ。さすがに考えたくもない。布団被ってやるから、終わったら言えよ」
「うん。ズボンは簡単だから大丈夫」
ズボンは簡単には履けるが、ハイネックがやたらと着た後にも少し引っ掛かる。
「終わったよ。ねぇ、サスペンダーってヤツ付けて? あっ、そういえばマフラー着けてたんだけど知らない?」
「立て。服ズレてるから直してやる。ん、デカイか。マフラー? そんなの汚れてたから捨てた」
「え、あれスゴく気に入ってたんだよ」
「んーなの知らん。黙ってろ、気が散る」
子供のようにピーピー話す彼に、苛立ちを感じた和真。鋭く睨み付けては、グッとサスペンダーをキツく締める。
「グッ……」
「ん、すまんな」
そして、軽くシワやヨレを伸ばす。
「おい、出来たぞ。それなら、激しく動いてもズレないし、脱げないはず」と再びベットに横になり、深い眠りへとついた。
「あれ、和真? カーズーマー。僕、帰る。ここ嫌だ」
どうにか起こそうと体を揺すっては、頬を叩く。しかし、爆睡しているのか起きない。
「だぁぁぁぁぁ」
子供のようにグズってはベットに倒れ踞る。ツンツンと頬を突っついても、つねってもびくともしない。しばらく黙り込み、ゆっくり起き上がる。
「無断で帰ろう。この人、起きなさそうだし……」
トンッとベットから降りると、グイッと左手が強く引かれる。よく見ると左手に手錠。運悪く右手ではない。右手なら関節を外せる。なのに――なぜ左手。よく見ると、和真の右手にもう一つの手錠。考えたくはないが、和真は人体模型を束縛しているようにも思える。だが、人体模型にはそれが分からないようで……。
「ねぇーカーズーマー。ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ……ねぇってば!!」
手錠を外そうと手首を動かしながら、さりげなく左手の親指の関節を外す。そして、ゆっくり手錠から手を抜いた。
「えへへッ少し痛いけど、関節外すことは出来るんだよ。右手はバコッて取れるけど」
手錠が外れて嬉しそうにクスクスと笑う人体模型。ベットからピョンッと飛び降りると、スキップしながら玄関へ。
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