骨と仮面

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 玄関に行くと白い紙袋が寂しそうに置いてあった。しゃがみ込み、袋の中を覗く。中には『化け物へ』と書かれた一枚のメッセージカード。袋をひっくり返すと新品のシルバーのスマホがストンッと落ちてきた。続いて、仮面と義眼、黒い手袋。それとウィッグ。 「あっ、カツラ」 「ウィッグだ。バカ。耳元でギャーギャー煩いんだよ。マンションだそ。近所迷惑になる。ここにいるときだけ静かにしろったく、ガキかお前は」  彼を追いかけるように和真は髪をグシャグシャと掻きながら、タバコをくわえる。ライターでタバコの先端に火をつけると「ふぅ……」と人体模型に吹きかけた。 「それ、壊すなよ。俺の名義で契約してる。電気料も電話料も少しは分かってくれ」 「うんうん。分かった」 「分かってないだろ」  寝ていたはずなのに、なぜか人体模型が動くと磁石のようにくっついてくる。不思議な人だ。 「外に出たい。ここ嫌だ。帰る」 「帰れるもんなら、玄関開けてみろよ」  ガチャッと鍵を開け、チェーンを外す。チラッとドアから外を覗くとカッと眩しい光が目に入る。 「ギャッ!!」  眩しすぎる光。  それは、太陽の光だった。  どうやらこのマンション。ちょうど太陽の日当たりの良い場所らしい。『太陽が真上にある』ということは今は昼か。 「ま、眩しい……」  慌ててバタンッとドアを閉める。光に慣れていないせいか左目がチカチカし、チクチクと痛む。 「ざまぁ」 「意地悪!!」  ムッと頬を膨らませ、外に出れない苛立ちと家に帰れない寂しさ。溜まりに溜まったのか、泣きそうな顔。そして、グスッと鼻を鳴らすと泣き出した。 「うぇーん。家に帰りたいよぉ。パソコン弄りたいし、スマホだってゆっくりやりたい」  しかし、泣いていても涙が出るのは左だけ。彼の感情が現れるのは左半分。血も同じ。右半分は表情を変えられない。骨だから。 「あぁ、もう泣くなよ。日が暮れたら、返してやるから我慢しろ」 「ぶぇーん」  泣き方が幼い子供。まるで、知能が発達しないまま、大人になってしまったのかのよう。例えるなら『見た目は大人、中身は子供』。どっかで聞いたようなフレーズになってしまうが、そうなのかもしれない。
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