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隠していたモノが表に知れ渡る。和真は「夢でも見てるんだろ」と新聞を簡単に折り畳み、人体模型の手の届かないよう棚の隙間に押し込む。
コイツに読ませても意味がない。
知能も知識も低いのなら、知らなくていいことだ――と。
「お前はこの世のことなんて知らなくていい。画面とでも話していろ。分かったな?」
新聞の内容をカタコトで口ずさみながら理解できず頭を抱える人体模型に近づき、静かに頭を撫でる。さりげなくスッとウィッグを外すや綺麗なスキンヘッド。半分骨で半分肌。気付かれないよう新しいウィッグを被せる。「ん」と彼は不思議そうに和真をじっと見つめ、和真も「ん」と人体模型を見る。
「なんか質感違う。いいやつ?」
「あぁ、調節できる。新しい義眼と仮面付けるか?」と目の前で見せびらかす。
「うん。義眼あるならその方が人間らしいよね」
躊躇いもなく前の仮面を外すとニコッと笑う。左は笑っているのに右は笑ってない。左を仮面で隠し、右の骨だけを表に出すと悪い夢でも見ているかのよう。
「ほら、早くつけろ」
「はぁい」
義眼を目の窪みに嵌め、その上にマスクをカチッと嵌める。今までは輪ゴムやら紐やらで固定していたが、その必要はない。
「おぉ、スゴーイ!!」
よっぽど義眼と仮面が気に入ったのか、ヒョイッと立ち上がる。部屋を物色するように、ゆっくり洗面台へ。
「これなら、少し暴れても大丈夫だよね? ねぇー和真ぁ」
ソファーに腰かけている和真にタックルするようドンッと軽く当たる。「膝枕」と彼の膝に頭を乗っけた。
「で、オフ会はどうなったんだ」
「んーとね。十六時に駅近くのファミレスだって」
スマホを弄りながら、ニヤニヤと和真に笑いかける。
「まだ、明るい時間帯だな。俺が同席するとややこしくなりそうだから、別行動だな」
「はぁーい。フンーフフーフーン。楽しみだなぁー」
――十六時。
少し日が傾いた頃。和真は膝で寝ていた人体模型を叩き起こす。
「ふぇ」
「仕事だ」
「あーい。仕事ー仕事ー」
寝ぼけながらスマホを握り締め、玄関で靴を履く。ガチャッとドアを開けるや太陽の光が目に入り「ギャ」と変な声をあげる。
「あ? 我慢しろ」
「チクチクする」
「いいから外に出ろ」
嫌がる彼を無理矢理外へ引きずり出す。玄関の鍵をかけ、逃げようとする彼の首根っこを掴んでは引き摺りながらエレベータへ。いつもならヘラヘラ話してくるのに、恐ろしいほど静かだった。
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