オフ会

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 ――そんなに日差しが怖いのか――  和真には人体模型の気持ちはわからなかった。世界がどう見えているのかも知らない。そのせいか、時より話が噛み合わなくなる。  エレベーターを待ちながら人体模型は和真の背中に隠れるように張り付く。緊張か、不安か。人体模型はブツブツ小言で何かを言うもハッキリとは言ってこない。ただ一言「いたい」。それは分かる。 「車持ってくるから、マンションの前で待ってろ。日差しが怖いなら日陰にでもいろ」  エレベータで降りるや和真は車を取りに外へ。一人残された人体模型は静かにエントランスで待つも、たまたま出入り口近くにいた鳩を見つけ興味を持ったのかゆっくり近づく。  五分後――まだ来ない和真をよそに人体模型は鳩をゆっくり追いかけ持ち遊ぶ。 「ポッポッポ、鳩ポッポ。まーめーがほしいか。そらやるぞー」  懐かしい歌。  そして、音痴な声。 「あれ、なんでボクこんな歌知ってるんだろ。ムムッボクなんで存在してるんだろ。わからない……わからない……」  突然悩み込み、苦しむように頭を抱える人体模型の横を勢いよく車が止まる。バタンッと力任せに閉まるドアに顔を向けると苛つく和真の姿。軽く蹴りをする仕草に鳩は飛び立ち、和真は目元に影を作りながら煙草を咥える。
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